NPO法人 しまだ環境ひろば 「事務局」 です。
昨日(8月18日 金 pm)は、島田市農業振興課主催、金谷公民館(みんくる)で開催された「島田市有機農業講演会ー持続可能な農業の実現をめざしてー」に参加しました。
冒頭、主催者の農業振興課 山本課長さんから価格低迷等農業経営は厳しい。いろいろな対策を講じているが中々成果が出ない。国は「みどりの食料システム戦略」を押し進めているが、島田市もこれを推進し生産者への支援をして行きたいと抱負を述べました。
本題に入り志太榛原農林事務所の地域振興課 平井靖巳氏から、戦略の概要の説明がありました。
内容は、温暖化ガスの削減を目指し、2030年までに化学農薬の50%削減、有機農業を25%に拡大、2050年までに農業生産量を40%増加、環境負荷を50%削減をして行こうとするもの。
そのために、有機農業の推進や化学農薬・肥料の低減や省エネ機械導入のための戦略交付金が用意されているというもので、静岡県も精力的にこれを進めて行きたいと意気込みを述べました。
次いで講演「持続可能な食料システムとは ー望まれる有機農業の拡大ー」と題して、NPO法人しずおかオーガニックウェヴ代表理事の 吉田 茂氏から詳しい説明がありました。
■ 20世紀後半からの人口増加とそれに必要な食料生産の増加と灌漑面積の増加が著しい。
■ 高収量品種(近代品種)の登場、化学肥料の大量投入、農薬の利用の増加。
■ SDGs「誰も取り残さない」の登場(今年はSDGs2030年までの中間年)
■ 南極の氷が溶ける! 線状降水帯という聞き慣れない言葉が頻繁に出始めた。
■ 農業水産分野の温暖化ガスの排出量は世界で全体の23%、日本では4.4%。
■ 農業からの温暖化ガスの排出は、牛のゲップや家畜の糞尿発酵からが多い。
■ 土の中には有機炭素が豊富に存在する。有機農業でこれを増やせば空気中の二酸化炭素と相殺できる。
■ 農薬使用で、生物多様性が喪失している。
■ 現行「基本法」も見直しされようとしている。
■ 日本の有機農業規模は小さい。またマーケットも小さい。
■ 日本の消費者は「有機農産物」への評価は「安全だから」が圧倒的第一位、デンマークは「有機農産物を消費しないと温暖化防止はできない」、評価の視点が全く違う。
■ 世界の有機農産物は増えている。日本は中々伸びない。
講師の結論は、「国民運動の展開による市場の拡大」、そして「マーケットがあれば有機農産物の生産は増える」でした。
当たり前のことですが、有機農産物を普通に消費するためには、国民の意識改革、ラジオ体操のように、日常の習慣になるまで国民運動化しなくてはならない。
次いで、今日の講演の最後「有機農業との出会いー生産取組みへの課題ー」と題して、有機農業家 園田巳義氏の体験談を聞きました。
農薬・化学肥料を使わず40年、いろいろと苦労があったようだ。形の良くないもの、見た目が悪いものに流通業者や消費者は目もくれない。
いくら作っても売れなければ経営は成り立たない。
漸く各地で有機農産物を評価する市民団体が出て来て、自分でも広報に努めてやっと生計が立つまでになってきた。
ただ残念ながら、価格は市場が決めるのではなく、自分(生産者)が決めている。そうでなくては成り立たない。
園田巳義氏のお話は大変有意義であったが、有機農業の拡大は至難の業だ。
筆者(しまだ環境ひろば)は、講師の園田巳義氏と組んで伝統食の「手づくり味噌の会」を運営していますが、毎年1~2月に約100名の主婦が集まって、有機農法で作った大豆やお米を使って手づくりの味噌を仕込んでいます。
100名余の主婦の皆さんは、安心・安全で、美味しい味噌に惚れ込んだリピーター、もう市販の味噌は買わない人たちです。
今日の講師の吉田さんの結論、「マーケットがあれば生産は増える」、「国民運動の展開による市場の創造」を、地道にやっているのが「手づくり味噌の会」です。
小さいながらも、こうした「手づくり味噌の会」のような活動が、持続可能な食料システムー望まれる有機農業を拡大のカギになるのではないかと確信しました。