生活情報交換会で「刑務所の役割」を学習

NPO法人 しまだ環境ひろば 「事務局」 です。

 

今日(2月16日 金 am)は、「第158回 生活情報交換会 2月例会」に参加、聴講者は39名と盛況でした。

 

生活情報交換会は、原則として毎月一回第三金曜日に、静岡市のアイセル21を拠点にして講演会を開催しています。

 

今日の演題は「刑務所の役割」講師は静岡刑務所 統括矯正処遇官 州濱延臣氏でした。

 

生活情報交換会の会員には、その道で長けた方も沢山おられ、自ら講師を担当したり、また知人を紹介したりしたケースは過去に何回もあります。

 

今回の演題「刑務所の役割」は、生活情報交換会の会長のTさんが篤志面接委員として定期的に静岡刑務所を訪れ受刑者の「そろばん教室」をボランティアで担っており、その関係で講師をお願いしたと聞いています。

 

講師の洲濱氏は簡単な自己紹介後、早速「刑務所の役割」について話始めました。

 

これまでの刑法は「社会からの隔絶」を目的としていたが、平成14年~15年の名古屋刑務所の受刑者の死傷事案を契機に、受刑者の処遇に関する法律改正が繰り返し行われた。

 

その結果、来る令和7年(2025年)6月1日から懲役・禁固刑を廃止し、「拘禁刑」を創設して、社会復帰を主眼とした作業と指導の組み合わせにより、受刑者の特性に応じた柔軟な処遇を推進しようとしている強調しました。

 

これまでのように、作業を黙々とやらせるやり方が社会に戻った時に本当に役立つものか。指示待ちではなく自ら考えて行動をする必要があり、コミュニケーション能力の向上が必要ではないか。

 

こうした観点から、工場作業終了後、コミュニケーション能力向上のための「対人関係円滑化指導」を実施するようになっているという。

 

加害者の更生指導だけでなく「被害者等の心情等を考慮した矯正処遇」もその事件を起こした受刑者に直接的に触れさせるようになったとのこと。

 

具体的には、これまで収容中の受刑者が被害に遭わせた人達の思いに触れる機会は殆んどなかったが、この制度の利用を申請した被害者に面接した担当官から受刑者に思いを伝えることも実施し出したという。

 

次いで講師は、静岡刑務所の沿革や組織、収容状況等を話し始めました。

 

■ 沿革:明治3年設置 昭和42年(1967年)東千代田に移転

■ 組織:6部制 総員213名(公安職 205名 行政・医療8名)

■ 収容人員:令和4年 482名(未決 63名 既決 419名)

■ 再入状況:過去5年間の再入率13.8%(少しづつ改善中)

■ 受刑者の1日:起床・食事6:35 作業・昼食・作業・夕食・就寝21:00

■ 食事:選択(ご飯・パン食)・カロリー指導・1日1名486円

■ 受刑者の罪名:窃盗以下広く分布

■ 受刑者の年齢構成:30歳未満から80歳まで分布

■ 刑期:2年~10年以上まで分布・平均5年2ケ月

■ 釈放:令和4年の場合169名(仮釈放125名・満期釈放44名)

■ 外国人の国籍:中国人・ブラジル人でほぼ50%

■ 刑務作業:生産作業・職業訓練・社会貢献作業・施設維持作業など

■ 職業訓練 フォークリフト運転科(資格試験合格率94.4%)

        ビル設備管理科(資格試験合格率80.0%)等

■ 教育指導:刑執行開始前指導・一般改善指導・特別改善指導

       教誨師指導(お坊さん等)(花まつり・クリスマス会)

       篤志面接委員指導(書道・コーラス・そろばん教室等)

       民間協力者指導(臨床心理士・各種コンサル・断酒会等)

■ 医療スタッフ:常勤9名内医師2名 非常勤医師3名

■ 医療設備:レントゲン室・診察室・歯科治療室

■ 刑務所内活動:受刑者運動会・慰問(吹奏楽演奏会)・矯正展等

 

講師の洲濱氏は最後に刑務所の役割は、作業と指導をうまく組み合わせて、その中で更生をさせながら社会復帰を目指させることです。

 

コロナ禍で開けなかった運動会を4年振りに開催し、吹奏楽の演奏会では感激して泣き出す受刑者もいました。やって良かった!と講演を締めました。

 

今日の講演は、通常の講演会では聞けない話でした。世の中からの隔絶が目的だった刑務所が、作業と指導を調和させながら、併せ被害者の心情も考慮しながら、社会復帰をさせる刑務所に変わって行く。この辺りを勉強した講演会でした。

 

静岡刑務所 洲濱統括官さん、今日はお疲れ様でした。